食べる 描く 読む ひと

走ったり泳いだり転んだり

ひとりごと

心は不思議と落ち着いて、でもどこか恋しさを胸に秘めている。寂しく思う。会いたいとすら思ってしまう。でもそれは恋というよりも、思い出をただなぞりたいという懐かしさなのだろうと思う。

あの人は夜の人で、夜になると現れる。夜の岸にずっといる気がする。いつでも。でも夜の岸にいるのは怖くて、結局できなかった。

断片的に思い出す。高速道路のオレンジの光、もうなくなってしまったレンタルカーのお店、青みがかった秋の空、冷えた空気にくっきりと映えるネオン、タイヤの転がる音、ベランダの目の前に光る少し欠けた月。どこを見てもあの人がいて、でもいつか忘れてしまうのだろうと思う。そのことは私をとても安心させるし、一方で切なくもさせる。

まだ私の気持ちはどこも行くことができず、この部屋を、この街を彷徨っている。きっと知らない土地、川の向こう側にはいない私の気持ち。

あの人は私を思い出すことがあるのだろうか? 私を恋しく思ったりするのだろうか? 後悔することがあるのだろうか? きっと最後の疑問はない。恋しく思うことも、ないだろう。それでいい。

ありもしないどこか未来で、私たちは上手くやっているのかもしれない。そんなことを思う。存在しない遠いところ。私はそんなあなたたちを祝福したいよ。何か美味しいものでもあげよう。

さよならは悲しいから、またいつかどこかで。

また一つお別れをする。数ヶ月前のような心も体もちぎれてしまうようなお別れではなくて、朝靄のような、蒸発していくようなお別れ。静かで、透明で、やわらかい。きっとこれから何度も静かで、やさしいお別れを繰り返すのだろう。